親知らずとは第3大臼歯のことで、その名の由来は多くの場合、親元を離れてから生え始めるため、親が歯の生え始めを知ることはほとんどありません。そのため「親知らず」という名がついたと言われています。
親知らずのことを英語では「wisdom tooth」と呼びます。これは物事の分別がつく年頃になってから生えてくる歯であることに由来します。人によっては一生生えない、あるいは先天的に存在しない場合もありますが、親知らずを含めると、人間の永久歯は合計32本生えることになります。

親知らずの数は0-4本です。顎の中で1本も作られなかったり、4本全部作られたりするため、生えてくる本数は個人差があります。
その上、歯が作られても全て生えるとは限りません。顎の中に埋まったままのケースもあります。これを「埋伏智歯」といいます。 特に下顎の智歯が歯冠を前に向け水平に埋まっているのを、「水平埋伏智歯」と言います。また半分埋まっているのを「半埋伏智歯」といいます。

人類の歴史において、顎と歯は退化しつづけています。 脳の発達と、調理に火を使うことにより、そして肉食を取り入れることにより、栄養を少量の食物でとることができるようになったからです。 このため、物を噛む回数がだんだん少なくなり、顎を使うことも減ることになります。そうして歯の数と大きさが減小し、顎も小さくなってきました。歯の大きさは緩やかに小さくなってきましたが、顎は特に近代になり急激に小さくなってきました。 このため、歯並び全体のサイズと顎のサイズとの調和が取れません。このために、親知らずは生えるスペースがなくなりがちです。

親知らずのレントゲン写真

適切な位置に生えていて歯並びと上下の嚙み合わせがよければ、 親知らずはそのままにしておいて問題はありません。親知らずがブリッジの土台となったり、歯を失った場合の移植歯として活用することができるため、むしろ積極的に残した方がいいケースもあります

しかし、年齢を重ねるにつれて骨が硬くなるため、親知らずを抜くタイミングが遅くなればなるほど抜歯に時間がかかるようになります。また、親知らずの抜歯が遅くなると、下顎管を傷つけるリスクも大きくなります。親知らずの根元は年齢を重ねるにつれて、大きな神経が通っている下顎管に近づきます。根元が完成しきっていない段階で抜歯すれば下顎管を損傷するリスクは抑えられます。

抜歯する必要があるかどうかは患者様によって異なりますので、まずは歯科医師にご相談ください。抜歯する理由がなければ、定期的に歯科医院で検診とメンテナンスを受けて虫歯や歯周病を予防し、歯の健康を維持しましょう。

親知らずが原因の虫歯
  • 下顎の歯がないため伸び出ており、下顎の歯肉を噛むことが多い場合
  • 後ろや横を向いて生えていて、喉や頬の粘膜に食い込んでいる場合
  • 歯肉が腫れて智歯周囲炎になっている場合
  • 噛み合わせが悪い場合
  • 前の歯を押して熾烈に悪影響を及ぼすリスクがある場合
  • 親知らずが虫歯になり、手前の歯まで虫歯になってしまった場合
半埋伏のため歯肉が腫れているケース
斜めに生えている親知らず

痛みについて

抜歯の痛みには、抜く時の痛みと抜いた後の痛みがあります。
抜く時の痛みについては、他の歯と同様に麻酔をした後の抜歯になりますので、抜くことで痛みを強く感じることはほとんどありません。抜いた後の痛みについては、麻酔が切れるタイミングで生じる可能性がありますが、当院ではレーザーで血餅(かさぶたのようなもの)をしっかりと作ることで、痛みを和らげるように努めています。
また、抜歯後に穴ができ、そこに血が溜まります。この血のかたまりは、かさぶたのようにその穴に蓋をします。この血のかさぶたが剥がれ、抜いた後の穴がうまくかさぶたのようにならなければ、顎の骨の露出で強い痛みを生じる場合もあります。放置すると痛みも長引きますので、抜歯後にはうがいをしすぎない、舌や指で触りすぎないなどの注意をお守りください。
ご希望があれば、穴の部分に人工コラーゲンを詰め、傷を塞ぐ治療もいたしますので、ご不安があればご相談ください。

腫れについて

通常、抜歯後2日以内が腫れのピークと言われます。腫れの対策には市販の冷却ジェルシートや保冷剤をタオルでくるんだもので冷やしましょう。冷やし過ぎると治癒が遅れますのでご注意ください。

抜歯後の穴について

抜歯後の穴は数カ月をかけて徐々に塞がっていきます。しばらくすると自然に取れるので、患部が気になっても舌や指、歯ブラシなどで刺激しないでください。もし刺激によってかさぶたが取れてしまうと、治癒が遅れたり感染を起こす原因になりますので、注意が必要です。

当院では、親知らずの抜歯が可能かどうかより的確に判断するため、レントゲン撮影を行っています。さらに複雑な親知らずの抜歯には、神経や血管を傷つけないようにするために、三次元で画像を取り込めるCT撮影で詳細な情報を得て正確な判断をします。より詳しい情報で適切な判断のもと、患者様に安全な医療を提供していくためにも、必要があれば総合病院にご紹介させていただきます。
抜歯後にはレーザーを使用し、術後の傷口の回復を早め、患部の殺菌・消毒を行います。抜歯前に痛みや腫れがあったり、埋伏歯を抜いたりした場合は、抜歯当日と翌日に休める日に処置を行うことをお勧めしております。また、お痛みや腫れが出る場合を想定して、抗生物質と痛み止めを処方いたします。

検査・診断

口腔内診査・レントゲン撮影など、親知らずの診断をしっかりと行います。
通常のパノラマレントゲンを撮影した後に、必要があれば、CT撮影を行います。健康状態の確認や麻酔についての説明があります。

STEP
1

手術

手術は局所麻酔で、可能なかぎり周りの組織の侵襲を少なくする抜歯を行います。
麻酔をして行うため痛みの心配はありませんが、ご希望の患者様は笑気吸入鎮静剤(笑気麻酔)でさらに少ない痛みで手術を行うことも可能です。切開の必要な症例は縫合処置を行います。

STEP
2

経過観察

感染予防のための抗菌薬や痛みを感じたときのための消炎鎮痛薬を処方します。
手術後、痛みの感じ方に個人差はあります。ご不安であれば、痛みが出る前に痛み止めを飲んでいただいてもかまいません。抜歯当日は、麻酔が切れるまでの飲食は控え、強い圧をかけるようなうがいや強く歯みがきをしないように注意してください 。

STEP
3

治癒の確認

約1週間後に術後の治り具合を確認します。縫合した場合には抜糸します。

STEP
4

よくある質問

親知らずの抜歯は痛いですか?

親知らずの抜歯は一般的に痛みを伴うイメージがありますが、当院では麻酔を十分に行うのはもちろんのこと、最新のレーザー機器を併用することで、出血を抑え、術後の腫れや痛みを軽減することに注力しています。レーザーは、止血効果だけでなく、殺菌効果も期待できるため、感染のリスクを低減し、よりスムーズな治癒を促進します。これにより、患者様のお身体への負担を最小限に抑え、快適に治療を受けていただけるよう配慮しております。

さらに、当院では必要に応じて、事前の精密検査としてCT撮影を行い、親知らずと血管や神経の位置を精密に確認した上で、安全に当院で抜歯が可能かどうかを判断しています。これにより、患者様のお身体への負担を最小限に抑え、快適に治療を受けていただけるよう配慮しておりますので、どうぞご安心ください。

親知らずは必ず抜歯が必要ですか?

いいえ、必ずしも抜歯が必要なわけではありません。まっすぐに生えていて、他の歯や歯ぐきに悪影響を与えていない場合は、抜歯しない選択肢もあります。しかし、痛みや腫れがある場合、虫歯や歯周病の原因になっている場合、隣の歯を押して歯並びに影響を与えている場合などは、抜歯が推奨されます。

親知らずの抜歯後、いつから歯みがき粉を使って歯磨きができますか?

抜歯直後は、傷口への刺激になるため、歯みがき粉の使用は避けてください。通常、抜歯から3日程度経ってから、刺激の少ない歯みがき粉を使用してやさしく磨くようにしましょう。それまでは、処方されたうがい薬で軽くゆすぐ程度にしてください。

親知らずのあたりの歯ぐきが腫れているのですが、抜歯した方がいいのでしょうか?

痛みがあるかどうかに関わらず、親知らずの周りの歯ぐきに腫れや違和感がある場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。親知らずが原因で炎症を起こしている可能性があり、放置すると悪化することもあります。歯科医師が状態を診察し、抜歯の必要性を含めて適切な処置を提案してくれます。

親知らずの抜歯後、どのくらいで食事ができますか?

親知らずの抜歯後の食事については、抜歯の難易度やレーザー治療の有無によっても異なります。一般的には、麻酔が切れるまでは食事を控えていただき、その後は刺激の少ない柔らかいものからゆっくりと始めることをお勧めしています。当院では、レーザーを用いることで、抜歯後の出血や腫れを抑え、治癒を促進するため、比較的早い段階で通常の食事が可能になるケースが多いです。具体的な注意点や食事の目安については、抜歯後に歯科医師より詳しくご説明させていただきます。

親知らずの抜歯後、どのくらいの期間、腫れますか?

下の親知らずの抜歯では、通常術後1週間腫れと痛みを伴います。2〜3日後に腫れと痛みのピークを迎え、その後は徐々に落ち着いてきます。まっすぐに生えている上の親知らずの抜歯ではほとんど腫れることはありません。
抜歯後数日経っても出血が止まらなかったり、腫れがおさまらなかったりする場合は、すぐに歯科医院を受診することをおすすめします。

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